■辰巳ダム■
犀川大橋基準点の降雨データから求めた流量による流量確率評価について
はじめに
 筆者らは、度々、高野河川課長ら石川県に対して、流量確率評価を行い、基本高水ピーク流量の検証をするべきであることを指摘していたが、石川県は全国で一般的に行われている方法で検討を行っているものであり、観測流量による流量確率評価はやる必要はないと頑なに拒否してきた。その理由の一つが、犀川大橋地点の流量観測(下菊橋測水所)が昭和53年以降しか流量記録の蓄積がないというものである。流量観測記録は少ないとしても降雨データの蓄積は十分であったから、降雨データを流出計算して変換した流量データで流量確率評価ができたはずにもかかわらず、これも行われなかった。
 今回の辰巳ダム裁判において、過去57年間の降雨データから変換して求めた流量の一覧が被告提出の証拠書類として示された。「主要地点における最大流量」(乙第30号証)である。引き伸ばし率1.0、飽和雨量Rsa=0mm、つまり、実際の降雨データをそのまま使用し、地表面が飽和状態で浸透、蒸発量がゼロと仮定して降った雨の全量が流出するものとして計算した流量一覧表である。このうち、犀川大橋地点の流量を用いて、以下に流量確率評価を行い、犀川大橋基準点の基本高水ピーク流量を検証する。


1.流量確率による評価
 犀川大橋基準点の57年間の降雨データから求めた流量(昭和17年から平成10年までの57年間で75個の流量、毎年最大値は40個の流量)によって流量確率による評価を行う。使用するソフトウェアは、財団法人国土技術研究センターの「水文統計ユーティリティVersion1.5」である。

2.流量データと観測記録年数
 75個の流量データは別紙1「表 犀川大橋地点における最大流量」である。
75個の流量データのうちの40個は毎年最大値である。

3.水文統計ソフトによる計算 
 財団法人国土技術研究センターの「水文統計ユーティリティVersion1.5」による。
40年間分の毎年最大値を用いた、犀川大橋地点の100年確率推定値は、各種確率分布モデル13種(Exp、Gumbel、SqrtEt、Gev、LP3Rs、LogP3、Iwai、IshiTaka、LN3Q、LN3PM、LN2LM、LN2PM、LN4PM)で検討する。
75個の非毎年流量値を用いた、犀川大橋地点の100年確率推定値は、各種確率分布モデル3種(Lexp、Gp、GpExp)で検討する。
 100年のほかに、150、200、300、400、500、800、1000、1500、2000年についても計算する。

4.計算結果
 各種確率分布モデルの計算結果は、推定値とデータとの適合度を判定する基準SLSC値が0.04を超える場合は、計算過程で解が発散して信頼性がないものとしてその手法は除外する。
 SLSC値が0.04以下の分布に対して、リサンプリング(JackKnife法)により推定値を算定し、推定誤差の最も小さい確率分布モデルが求めるものである。

計算結果は、別紙2による。この計算結果から100年確率流量推定値に関する数値を抜き書きしたものが、別表3「水文統計ユーティリティーによる犀川大橋基準点100年確率流量推定値の比較」である。

4.1 毎年最大値の場合
 毎年最大値40年の場合、SLSC値が0.04以下の確率分布モデルは8(Gumbel、Gev、LP3Rs、LogP3、Iwai、IshiTaka、LN3Q、LN3PM )である。JackKnife推定誤差が97と最も小さいケースLN3PM の1337m3/秒が、求める100年確率流量推定値である。

4.2 非毎年値の場合
 非毎年値75個の場合、SLSC値が0.04以下の確率分布モデルは1つである。JackKnife推定誤差が142、求める100年確率流量推定値は、1148m3/秒である。小さいデータが多くあり、これに影響を受けて小さくなったと推測できる。非毎年値は参考にとどめる。

5 100〜1000年確率流量
 犀川大橋基準点の流量確率評価結果を一覧にすると以下のようになる。なお、飽和雨量ゼロミリメートルである。

確率規模

毎年値
m3/秒)

【参考】非毎年値m3/秒)

備考

1/100確率規模

1337

1148

基本高水ピーク流量2170

1/200確率規模

1428

1171

 

1/300確率規模

1480

1180

 

1/500確率規模

1543

1188

 

1/1000確率規模

1626

1193

 


 なお、犀川大橋基準点のおおむね100年に1回の基本高水ピーク流量は、1750m3/秒と想定されているが、これは飽和雨量100ミリメートルと仮定した場合の数値であり、飽和雨量ゼロミリメートルでは約2170m3/秒となる。

6 結論
 過去75年間の実際の降雨データから求めた流量を確率評価して得られた、100年確率の最大流量は毎秒1337立法メートルである。これに対して、石川県が想定する基本高水ピーク流量は毎秒2170立法メートルである。その差は、833と辰巳ダム3個分の開きがある。
 これは、基本高水ピーク流量が「有史以来、発生したことの無いような流量である。」と原告が指摘する所以である。
2009.9.24 中 登史紀

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 エクセルファイル文書別紙1「表 犀川大橋地点における最大流量」→クリック
 エクセルファイル文書別紙2「計算結果」→クリック
 エクセルファイル文書別表3「水文統計ユーティリティーによる犀川大橋基準点100年確率流量推定値の比較」→クリック

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